サド侯爵夫人
6日に一日だけの大阪公演の「サド侯爵夫人」を拝見してきた。
19:00開演 シアター・ドラマシティー 8列センターより拝見した。
19:00~19:45分 10分休憩、19:55~20:45分、15分休憩、21:00~21:45分というタイムテーブルだった。その休憩時間のうちに、何年かの時間が経過しているという訳だ。
舞台装置はごくシンプル。下手に黒いカーテンで仕切った入り口、舞台は傾斜した台があるだけで、あとは、登場人物が6人。それも女性ばかり(男性が演じるね)が、華麗に登場する。
いやもう、一言感想は疲れましたに尽きる。あの膨大で流麗な台詞に彩られた舞台を息を詰めて拝見すれば、疲れないほうがおかしい。三島作品でも「サド侯爵夫人」の上演回数は多いほうではないだろう。何しろ、演じるのに力がいるとおもう。今度でこの作品を拝見するのは二度目か三度目、新国立とあとどっかで拝見したと思う。
ルネ(サド侯爵夫人) 篠井英介
シミアーヌ男爵夫人 石井正則
アンヌ(ルネの妹) 小林高鹿
シャルロット 山本芳樹(Studio Life)
サン・フォン伯爵夫人 天宮良
モントルイユ夫人 加納幸和
全員が男性ということで声が低いのが、耳には心地よかった。女装が似合っているかどうかはまあ、変な感じのする人もいたが、ドレス姿であまり動きはないから邪魔にはならぬ。ロココの時代の衣装らしく絢爛豪華。頭もドレスに合うように、派手派手だ。
篠井さんのルネは一見、清楚で貞淑な貴族の奥方に見えるが、どことなく妖しい蔭が付きまとうのが素敵だった。おとなしそうに見えても、母親にやわらかく、強情に逆らうところなんぞは、ぢつは芯の強い女性なのだと思える。この性格がラストに生きている気がした。
加納さんのモントルイユ夫人はルネの母親だが、最初はオレンジのラメ入りのドレス姿でご登場だ。派手ぇ。貴族でもあまり上流の貴族ではないのだろうかと思わせる口調と、世渡りを実直にしてきたと繰り返すところが海千山千の女を思わせる。ただ、台詞の調子が貴族の夫人らしくないのが残念だったな。サン・フォン伯爵夫人のほうが似合うかもしれないと思ってしまった。
アンヌ、ルネの妹は現実的で、天真爛漫というよりは打算的と思えてしまった。母親に似て、世渡りが上手そうだ。この人が一番、普通の貴族の娘に見えた。
サン・フォン伯爵夫人はサド侯爵と同じように、放蕩と耽美の世界に浸っている異端児だ。えらく情報通で、舞台の最初にサド侯爵の行状を長々と聞かせてくれる。迫力はあるが、台詞を咬む回数が多すぎ。せっかくのリズムの良い台詞が台無しだわ。
シミアーヌ男爵夫人は信心深いサド侯爵の幼馴染。モントルイユ家とは深い親交があるようだった。サン・フォン伯爵夫人の話しを十字を切りながらも、熱心に聞いている様子が可笑しい。スキャンダルは貴族夫人の糧だもんね。
シャルロット、庶民の代表としてこの舞台に登場しているのだろうが、今回は存在感が薄い気がする。前に見たときはもっと、庶民のエネルギーというか、不気味さが最後の幕で感じられたとおもうのだが。
重くて、疲れるお芝居ではあったが、見に行ってよかったと思う。特に、第二幕のルネとモントルイユ夫人との激しい対立の場面は火花が散っているというのがふさわしい場面だった。最後のルネの一言は怖いぞ。ありえそうで・・・
第三幕で、ルネが信仰生活に入ろうとする箇所は、ちとだるい気がする。原作どおりなんだけど、サド侯爵の書いた本(多分、「ジュリエット物語あるいは悪徳の栄え」)のジュスティーヌ、貞潔で道徳的な女性が、むごい一生を送り、死に至るのを読んで、ショックを受けたというのは、いかがなものかとも思ってしまった。
サド侯爵の著作で一番有名なのは「ジュリエット物語あるいは悪徳の栄え」だろうが、鏡の表裏のような「ジュスティーヌあるいは美徳の不幸」がある。
興味のある方はどちらも読んで見られるといいかもしれない。かなりあくどい表現が多いですけど。
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コメント
>とみ様
先ほど、拝見してまいりました。どら猫のい~加減な感想が恥ずかしくなるくらい、真剣な考察は、さすがにとみ様ですと感心しております。
一ヶ月間、お疲れ様でございました。
さらに、35万ヒットもおめでとうございます。
投稿: どら猫 | 2008年11月30日 (日) 01時47分
>どら猫さま
あれから約ひと月。やっと書けました。どよよーん???の謎が解けました。
これで遅ればせながら憂国忌が迎えられます。
投稿: とみ | 2008年11月30日 (日) 01時05分
>ぴかちゅう様
コメントとTBをありがとう御座います。八千代座の遠征で少し疲れてしまってお返事が遅くなりました。
篠井さんと加納さんのバトルは迫力ありましたよね。あのお二人は力が均衡していないと面白くないと思います。
非常に疲れるお芝居なので、封印されるのも無理はないかと。
こちらからもTBさせて頂きますね。
投稿: どら猫 | 2008年11月18日 (火) 01時03分
遅まきながら、東京公演の初日を観た感想をTBさせていただきましたm(_ _)m

歌舞伎が大好きだった三島の戯曲をロココスタイルのコスチュームプレイでありながら歌舞伎調の演出をしたことが素晴らしいと思いました。花組芝居以来の篠井英介と加納幸和の共演ということで期待していましたが、第二幕の最後の母親と娘の緊迫感あふれる台詞の応酬の中で二人がきっと極まった姿は「忠臣蔵」の九段目のお石と戸無瀬のようで興奮!
三島由紀夫は好きな人物ではないのですが、この作品については天国から地獄までをつながったものとして世界を描き出したのかと最後は勝手に納得して感動しておりました。それでも「サド侯爵夫人」という作品は疲れるのでもうこの舞台で封印することに決定!
最近、花組芝居は観るようにしていて、年明けの「夜叉ヶ池」も観劇予定です。今日は木挽堂書店で加納さんの『拝啓かぶき座の怪人さま』という本をサイン付きで見つけて買ってきて早速読んでしまっています。う、う、面白い~。
投稿: ぴかちゅう | 2008年11月17日 (月) 02時21分
>スキップ様
>今度から「どら猫さ~ん、来てますかぁ~」って会場で
叫んでもいいですか?(笑)
それはちとご勘弁を。(>_<)叫ぶほうもきっと恥ずかしいですよぉ。(^^♪
澁澤さんの翻訳で読みましたが、あの時代の翻訳にしては、あくどいと言えるだろうなぁと思います。ぜひどうぞ。
三島さんの芝居は台詞があればそれでいい。ってな感じですから演じる役者も大変だと思います。
篠井さんも加納さんも女形には慣れておられるからまだいいけど、初めての方にはホントご苦労さまでしたという感じでした。
投稿: どら猫 | 2008年11月14日 (金) 06時35分
どら猫さま
またまた同じ日(といってもこの公演は1日だけでしたが)
に観劇したようでした。
今度から「どら猫さ~ん、来てますかぁ~」って会場で
叫んでもいいですか?(笑)
私はこの作品は舞台を観るのも初めてで、もちろん戯曲も
読んだことはないのですが、とても見応えがあって楽しめ
ました。
確かに、あの膨大なセリフを追うのはとても神経が疲れ
ましたが。内容も内容ですしね。
三島由紀夫の戯曲はこの後読むつもりでいるのですが、
どら猫さんオススメのサド侯爵の著作も読んでみようかしら。
あくどい表現ってどんなでしょう、と興味シンシン(笑)。
投稿: スキップ | 2008年11月14日 (金) 02時56分
>とみ様
最近は戯曲を読むことが少なくなりましたが、下手な小説より面白いものが沢山ありますよね。勝手に登場人物を想像して、頭の中でお芝居を見ている気分になるのも好きですが、ちょっと危ない気もする(爆)
>悪徳が子供のおいたに思えるのは、
ロココの時代は文化の爛熟時代ですから、悪徳が貴族や富裕層の暇つぶしになっていたのかもしれませぬ。
でも、サン・フォン伯爵夫人のほうが、性質が悪いかもしれない、と思っちゃいました。
投稿: どら猫 | 2008年11月14日 (金) 00時05分
>どら猫さま
悪徳が子供のおいたに思えるのは、視座がモントルイユになっているからと自覚してしょぼんとなりました。しかし、戯曲は文学ですね。
投稿: とみ(風知草) | 2008年11月13日 (木) 12時56分
>かしまし娘様
まいど~(^^♪ようお越し。
なかなか迫力の舞台でしたよね。あれを女性がやるとまた雰囲気が全然違いますよぉ。
加納さんが好きなのを自覚された訳ね。これからは花組の観劇が増えるのかしらね。
大阪公演は日数が短いです。集客力がない芝居という訳でもないでしょうけど、観劇人口自体が東京とは比べ物にならないくらい少ないですからね。仕方ないかも。
まだ大阪在住なのでマシだと思うよ。もっと地方になると、どこかに行かないと見られないでしょ。
TBもありがとうございました。こちらからもTBさせてもらいますねぇ。
投稿: どら猫 | 2008年11月13日 (木) 00時15分
どら猫様、まいど!
三島ワールドにドップリ。とまではいかなかったけど、
こういうキャストもありなのね。って感じで…。
女性陣で演ると全く違う空気になるんでしょうね。
「サド~」を観るのは初めてだったので、妄想が膨らみました(笑)
でもって、私は加納幸和が好きなんだってことを認識した(遅っ)
舞台装置がステキでした♪
なんで大阪は1日しかないの?そんなに集客力のない公演なんでしょ~か。ムムム。
投稿: かしまし娘 | 2008年11月12日 (水) 09時27分