「登仙の巻」でお仕舞い
またもや、土日とブログの更新ができなかった。その理由はまた別エントリで。
「登仙の巻」 2時間38分 88歳から90歳で亡くなるまで
いよいよ、十三代目さんの最後の日までをつづった「登仙の巻」にたどり着いてしまった。ほっとすると同時に、もう終わってしまうのかという寂しさも感じつつ。
この巻で拝見できたのは、「桜門五三切」の五右衛門、「荒川の佐吉」の政五郎、「御浜御殿網豊卿」の新井勘解由、「車引」の藤原時平、「寿式三番叟」の翁、「寿曽我対面」の工藤祐経、「鬼一法眼三略巻の奥庭」の鬼一法眼、「湖水御座船」の佐藤清正
この演目の多さを見ても、いかに十三代目さんが舞台に立つことが好きだったか、大切だったかが良くわかる。もう、視力はほとんどなしで、足元も覚束ないような日常を過ごされながらも、舞台に立たれるとしゃっきりとなさって、感動を与えてくださる。
たしかに、演出も少しは変わっているし、口跡のあやしい部分もあるだろうが、それでもおおらかな演技でお芝居をなさっていた。
「菅原伝授手習鑑」で菅丞相をなさっている時は、半分、神様のようであり、時平をなさっている時も、悪でもあくまでも品の良い公家としての悪なのがすごいなと思ってしまう。
確か、この南座の顔見世は拝見しているはずだ。十三代目、我當、秀太郎、孝夫、進之助と松嶋屋の総出演のような舞台だった。
端正な松王丸、やさしげな桜丸、力強い梅王丸と堂々たる時平で堪能したものだ。
「荒川の佐吉」での情のある、政五郎もよかったし、綱豊卿の新井勘解由も立派だったな。確か、「桜門五三切」の五右衛門は初役でなさったと思う。もう、すごいとしか言い様がない。
久しぶりの芸談をきく会にお出かけになった時にも、楽しそうにお芝居の話をなさって、骨の髄まで歌舞伎役者なんだなぁと。
嵯峨野のご自宅のショットに、籐椅子だろうか、ゆったりとなさって目を閉じて、風を感じておられたかの様なご様子があった。
なんだか、もう俗世のわずらわしさは忘れ去ってしまったかのような、静かな落ち着いた表情を拝見していると、「登仙」の言葉はちっとも大げさじゃないなと思えてしまった。
当代、仁左衛門様がこの巻を一番とお勧めになる理由がわかるような気がした。
ちなみに、「登仙」とは人が仙人になること。まさしくそんな感じのする最晩年のお姿であった。
拝見できて、本当によかった。また上映される機会があれば拝見しに出向こう。
a せっかく感動した感想をつづったが、「登仙の巻」の前の休憩時間の出来事をば。そのときは当代、仁左衛門様のビデオレターがかかっていたのだが、次の上映時間になったので、係りの方が、ビデオを切ろうとした時のことだった。
当代、仁左衛門様のご贔屓で、よくお見かけする方が、「前の休憩の時も途中で終わって、次の休憩に続きをかけると言っていたのに、巻戻しすぎて、我當さんから始まってしまった。仁左衛門さんが見たいのに・・・・」とクレームを付けられた。実はどら猫も仁左衛門さんのをちゃんと拝見していなかったので、内心、うんうんと思っていたら、係りの方が終演後に、仁左衛門さんの分を放送しますと。ラッキー!!終演後に仁左衛門様のビデオレターを最後までしっかりと拝見して帰りました。
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名前を継ぐということは、家を守っていくこと。
300年以上も続く名前、片岡仁左衛門。
仁左衛門さんが講師の歌舞伎入門@日本の伝統芸能。
(NHK教育:毎週水曜日午後2時 / 再放送:毎週火曜日午前5時半)
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それが大事だと語る十五代目仁左衛門さん。
... [続きを読む]
>ハヌル様
コメント&TBを有難うございます。
本当にこの映画を拝見できて良かったです。嬉しかった。
晩年にしか拝見していないけど、素敵な役者さんでした。
秀太郎さんが「父は晩年になって注目されてきたんです。」と仰っていましたが、芸の奥って深いですよね。80歳を過ぎてから、開花なさるんだから。
また機会があれば絶対に拝見に行こうと心に決めています。
投稿: どら猫 | 2008年9月 2日 (火) 23時41分
6作品鑑賞お疲れさまでした。 パチパチ~(拍手)
私は今回、3作品を観ることが出来ましたが、どれも素晴らしいものでした。
「孫右衛門の巻」では孝夫さんと雀右衛門さんの忠兵衛・梅川、我當さんの八右衛門のお稽古の様子、十三代目さんの本舞台の様子をたっぷり観られて涙ながらに感動しました。終わったときに会場から自然に拍手が出たのも良かったですね。
全てが集約されているというか、仁左衛門さんの全てがここにあると感じたのは、今年の3月に下北沢のトリウッドで観ることが出来た「登仙の巻」でした。
一番長い映画なのに、ホントにあっという間なんですよね。
もう一回巻き戻して観せて欲しいとさえ思いました。
本当に舞台が好きな方だったんですね。 だからこそ幸せを感じていられるというような、そしてご家族も同様に・・・。
どら猫さんが演目、役柄を書いてくださっているので確認出来て有り難いです。 しかもご覧になっているなんて~!
自然の音だけがする嵯峨野の御自宅にいらっしゃる静かなお姿を観ているだけでなんかとーっても温かくて癒されました。 まさに「登仙」ですね。
>仁左衛門さんが見たいのに・・・・」とクレームを付けられた。
いらっしゃいましたね。 トリウッドでは映画上映の前に当代の仁左衛門さんのビデオレターが回ごとに流れていたので、今回も何度かに分けて上映前にそういう工夫があればなあ、なんてちょっと思いました。 せっかく松嶋屋の皆さまがコメントを残してくださったんですものね。
でも、大阪でも上映を実現させていただいた方々には、本当に感謝、感謝ですね!
以前にコメントいただいた拙記事を今更ですがTBさせていただきます。 長々とコメント失礼しました(苦笑)
投稿: ハヌル | 2008年9月 2日 (火) 21時19分
>ぴかちゅう様
この巻が一番のお勧めというのは、ビデオレターで仰ったんですよ。
「父を嫌いな人はいないと思いますよ」(大阪弁のアクセントで)と仰ったときのお顔も印象的でした。
「好きな人はおおいけど、嫌いな人も多いゆのはよういてはりますけどねぇ」とも。
ご家族みんなに愛され、観客に愛され、家族を愛し、芝居を愛して一生を送られた方なのだと思いました。
投稿: どら猫 | 2008年9月 2日 (火) 02時01分
全作品の感想アップ、お疲れ様でした!
>「登仙」とは人が仙人になること。まさしくそんな感じのする最晩年のお姿......この最後の巻のタイトルは言い得ていてさすがでした。本当にそんな感じだと思って観ていました。
>当代、仁左衛門様がこの巻を一番とお勧めになる......そうなんですか?!次回観る機会があったら私もこの巻を最優先にさせていただきます。
仁左衛門丈のビデオレター......もしっかりご覧になれてよかったですね。東京の上映会でのビデオレターと内容も違うのでしょうけれど、それも機会があれば拝見したいものです。
投稿: ぴかちゅう | 2008年9月 2日 (火) 00時40分