「人と芸の巻」(中・下)
中、下は一緒にして書いてしまおう。記憶が薄れていくのが怖いからねぇ。
この中で拝見できる演目は「菅原伝授手習鑑」、「妹背山婦女庭訓」、「堀川波の鼓」、「鬼一法眼三略巻」、「寿曾我対面」、「廓文章」。
いやぁ、少しだけとは言え、そうそうたる演目ですね。菅丞相はとても評判の高い演技で、神業とまで言われたもの。まったく素晴らしいものでした。梅幸さんの覚寿がおっとりとした気品があって、これまた素晴らしい。最近は芝翫さんがおやりになっているけど、感じが全然違っているのが良くわかる。梅幸さんはやわらかい雰囲気だし、芝翫さんだと気丈な感じが先にたつような気がする。
「対面」の工藤は拝見しているのだが、いつの公演かは覚えていない。古い筋書きなどは引越しに紛れて無くしているものが多いので、調べられない。
どれも、お年を感じさせない、素晴らしい演技だと思う。十三代目さんは本当にお年を召してからのお役が素晴らしいと思ってしまう。お若い頃を拝見したわけではないが、ビデオや歌舞伎チャンネルなどの古いお芝居を見ていると、そう思ってしまうのだ。
この演目の中で、当代がなさっていないのは入鹿と鬼一法眼かな。「菅丞相」は三回なさっていると思うが、全部、拝見した。「彦九郎」は確か、雁次郎さん(現、藤十郎さん)となさっていたかなぁ。(ちょっと記憶が曖昧。)やるせない雰囲気がよかった。
「伊左衛門」は襲名の時にもなさっているし、沢山の方がご覧になっているだろう。
我當さん、秀太郎さん、孝夫さんも登場なさっていて、お若いですねぇって。秀太郎さんはまだ今ほど、色気が全開じゃなくて、可愛らしい感じのほうが先にたってますな。
ビデオレターで進之介さんが面白いことを言ってました。正確ではないですが、覚えていることを。
「祖父も人間ですから、機嫌の悪いこともあるんです。でも、家族以外が加わると、とたんに、公人になって、周りの空気が清潔になるんです。(浄化されるとも言ってたような)」
これって、面白い表現だと思って。
「芸談を聞く会」での役の解釈のお話や、お盆のお迎え火を焚くのに、先にご先祖のお墓にお知らせに行くというお話しなど、貴重なお話しがいっぱい。
家族の方々が、お父上を語る時の様子も、一家が本当に仲睦ましいというのが良くわかり、微笑ましいし、羨ましい。
中の終演後に、秀太郎さんからご挨拶があった。十三代目さんもこの記録映像をとても気に入っていて、今日もどこかから喜んでみているかもしれないというニュアンスのお話しもあった。今でも、ホントに懐かしそうに、嬉しそうにお父上のことを語られる、秀太郎さんもとても素敵でした。
休憩時間のロビーでも、気軽にお話しになってたし、写真にも納まっておられた。気さくな方だ。どら猫もカメラを持っていけばよかったな。
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» 08/03/08 「歌舞伎役者 十三代目片岡仁左衛門」 2・3【人と芸の巻(上・中)】 [ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記]
{/hamster_2/}
84歳から88歳までの13代目仁左衛門の舞台、芸談、生活の記録は、「人と芸の巻(上・中・下)」として3本にまとめられている。芸談の多くは13代目の長年のご贔屓の女性グループ「芸談をきく会」での話を撮影している。
上と中までを初日で鑑賞。
{/face_warai/}
第2部【人と芸の巻 上】(94分)
1987年(昭和62年)6月「伊賀越道中双六」の沼津の平作。今回の6本の中では一番最初に撮影されたという大阪・中座での舞台。こじんまりした小屋という感じがしていい雰囲気。大... [続きを読む]
>ムンパリ様
>すごいフットワークです♪
って、そこでお会いするムンパリさんはど~なのよって突っ込んでおこう(爆)
お茶屋遊びは十三代目さんの頃は当たり前の遊びだったのでしょうね。だから伊左衛門が「自然」に出来るんだと思いますよ。
エピソードとしては、当代の夫人がまだお座敷に出ておられるころに、孝夫さんが九州での公演の時に、祇園での年中行事があって、十三代目さんがお茶屋に孝夫夫人を呼んで、「孝夫ちゃんが九州やさかい、お父ちゃんが来たったで」と申されたそうな。イキですな。
投稿: どら猫 | 2008年8月30日 (土) 00時39分
こちらにも。
菅丞相のこと、どら猫さんがそこまで書かれるのも凄いですね!(笑)
このお役での評判は私もお聞きしてましたので、これがそうなのかと、品のあるお姿をただただじっと見入っておりました。
お茶屋さんで三味線を弾く粋な十三代目、唄のお上手な秀太郎さんの映像もすごく印象的でした。
映画で見た後に、秀太郎さんのお話が聞けたのもよかったですね。
実は翌日に、三越劇場で秀太郎さんをお見かけしました。すごいフットワークです♪
投稿: ムンパリ | 2008年8月28日 (木) 12時43分
>ぴかちゅう様
コメント&TBを有難うございます。
「菅丞相」を当代が最初に演じられたときはとても緊張しておられるのが、客席からでもわかりました。十三代目さんの演技が絶賛されていましたから、余計でしょうね。難しいお役ですし。
少しでも、十三代目さんの舞台を拝見できる機会を与えてくださった。方々に感謝しています。
投稿: どら猫 | 2008年8月27日 (水) 09時04分
TBの第2弾も送らせていただきましたm(_ _)m
>「菅丞相」は三回なさっていると思うが、全部、拝見した......羨ましいですねぇ。さすがに長くご覧になっているのでどら猫さんの貴重な財産でらっしゃいますね。
歌舞伎歴の短い私は、こういう記録映画で観る事ができたことを感謝しています。
関西の上映会のビデオレター、ご家族の何人もが登場されるということで、それも素晴らしいです。孫の進之介丈の言葉にお祖父様の人間らしさも垣間見えるのがいいですね!
投稿: ぴかちゅう | 2008年8月27日 (水) 00時37分